宅建試験の科目は、学校の教科とは違う耳慣れないジャンル分けです。この記事では、宅建試験の科目ごとの点数配分と得点目標を解説します。試験や科目の内容がどんなものか、何の理解が重視されるかなども解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
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・宅建の受験は初めてで、内容のことを知りたい
・科目別の点数配分を知って目標点数を決めたい
・合格のための勉強法を知りたい
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宅建試験の出題形式
宅建試験(宅地建物取引士試験)は、不動産業界で働く人にとって最もニーズのある資格試験です。不動産に関連する法律の幅広い知識力を問うために、マークシートの全50問を2時間で解答します。
毎年、50点中およそ35〜37点が合格ラインとなっており、出題内容が難しい場合はそれより低くなる年もあります。
宅建試験の概要
※2024年8月時点の情報です。
どんな試験? | 毎年20万人以上が受験する人気の国家資格 |
実施日程 | 7月〜:出願 10月第3日曜日:試験日 11月:合格発表 |
試験方法 | 四肢択一式マークシート方式 2時間 50問回答(登録講習修了者の場合は45) |
受験料 | 8,200円 |
宅建の試験科目(分野)とは
宅建試験は、大きく5つの科目(分野)に分かれ、それぞれの分野から出題される問題数が決まっています。5つの分野は以下のとおりです。
- 権利関係
- 法令上の制限
- 宅建業法
- 税
- その他
5つの科目のうち「税」と「その他」を一つにして、4分野とすることもあります。すべての分野が、法律の運用や数値の暗記に関わる出題がほとんどです。中には一部、不動産の市場動向や統計の数字、定型の様式の書類の内容などを選択式で答える設問もあります。
設問は4肢からの選択ですが、「正しいものの組み合わせを選ぶ」「間違っているものをすべて挙げる」など、正しく理解していないと回答できない問題が相当数あります。ていねいに問題を読まないと誤答するひっかけ問題にも要注意です。
分野ごとの出題数の比率と出題順は、基本的に毎年同じです。たとえば問15から問22は毎年法令上の制限に関する出題になっています。
宅建の試験科目ごとの配点
宅建試験の、科目ごとの詳細内容と配点と詳細内容を解説します。分野ごとの配点は以下です。
出題範囲 | 配点 |
権利関係 | 14点 |
法令上の制限 | 8点 |
宅建業法 | 20点 |
税その他 | 3点 |
5問免除問題 | 5点 |
この表で権利関係と宅建業法の点数のウエイトが多くなっていますが、それぞれの科目でどのようなことが出題されるのでしょうか。以下で解説します。
権利関係【14点】
出題範囲 | 出題科目 | 配点・設問 |
権利関係 | 民法借地借家法建物区分所有法不動産登記法 | 14点 (問1から問14) |
権利関係は民法や借地借家法ほかの法律を背景に、不動産に関わる人の間の権利の先後(優劣)を答える問題が中心です。
不動産業では売主と買主、貸主と借主の間でトラブルになったときに、ケースごとに「どちらの権利が優先されるか」の判断が求められることがあります。法律知識で正しい一次判断を下せることが、この科目の目的の核心です。
民法は深い理解が求められ、例年難問や奇問も含まれます。
一方、毎年出題がある借地借家法、建物区分所有法、不動産登記法は暗記で対応できる分野です。
例えば以下のような設問です。
<過去問題:令和5年(2023年)問14 >(抜粋)
不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。
・新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、所有権の保存の登記を申請しなければならない。(答えは×)
・登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。(答えは○)
実際に数年分過去問を見て、傾向を掴んでみましょう。
時間がない時は、これらの分野で抑えるべきポイントを最優先でつかむことも合格への近道です。
法令上の制限【8点】
出題範囲 | 出題科目 | 配点・設問 |
法令上の制限 | 都市計画法建築基準法農地法土地区画整理法宅地造成等規制法国土利用計画法その他の法令 | 8点 (問15から問22) |
法令上の制限は、主に建物づくり・街づくりを適正に行うために求められる、規則の知識を問う科目です。
無秩序に好きな場所に好きな設計の家を建てて住んでいたら、暮らしの利便性や安全性、防災上の問題が山積みになっていき、地域産業の発展を妨げる要因にもなります。
そこで、行政が定めたエリアごとの街づくりプランや、建物を作るうえでの仕様を決め、許可や届け出によって状況が共有され、街の状態が健康に保たれるシステムがあるのです。
法令上の制限では、このシステムに関する知識が問われます。
例えば以下のような出題がされます。
<過去問題:令和5年(2023年)問15 >(抜粋)
問題:都市計画法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
・高度利用地区は、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、都市 計画に、建築物の高さの最低限度を定める地区とされている。(答えは×)
・地区計画は、用途地域が定められている土地の区域のほか、一定の場合には、用途地域が 定められていない土地の区域にも定めることができる。(答えは○)
専門的な言葉が多く出題されるため、最初は慣れない分野ですが、ネットで画像を検索したり、実際に街中を歩いてみたりして、イメージと言葉を紐づけて覚えることも、記憶を効率化させるコツです。
宅建業法【20点】
出題範囲 | 出題科目 | 配点・設問 |
宅建業法 | 宅建業法特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保に関する法律 | 20点 (問26から問45) |
宅建業法は、不動産業を行う人が守るべき決まりやコンプライアンスを問う科目です。
不動産業と言えば、過去には悪徳業者のイメージもあり、お客さまが泣き寝入りを強いられた例もありました。
そこで、宅建業の就業資格や仲介の報酬規定、事務所の構え方の仕様、契約の方法、トラブル時の責任の取り方など、法律が改正されてきた歴史があります。
消費者保護の観点からのルールを覚えるのが宅建業法の分野です。
例えば以下のような出題がされます。
<過去問題:令和5年(2023年)問33 >(抜粋)
問題:宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1.甲宅地を所有する宅地建物取引業者Aが、乙宅地を所有する宅地建物取引業者ではない個人Bと、甲宅地と乙宅地の交換契約を締結するに当たって、Bに対して、甲宅地に関する重要事項の説明を行う義務はあるが、乙宅地に関する重要事項の説明を行う義務はない。
・「宅地の売買における当該宅地の引き渡しの時期について、重要事項説明において説明しなければならない」(答えは○)
・「重要事項説明書の電磁的方法による提供については、重要事項説明を受ける者から電磁的方法でよいと口頭で依頼があった場合、改めて電磁的方法で提供することについて承諾を得る必要はない。」(答えは✕)
範囲は、ほぼ宅地建物取引業法(宅建業法)からのみと狭く、問題の難易度も高くないため、覚えてしまえば得点源となる科目です。
過去問題が出尽くしているため、個数問題(正しいものは何個あるか、など)の出題が増えているのも近年の傾向です。出題に対して、なぜこれが正しいのか、誤りなのかという正確な知識が求められる分野です。
宅建試験の点数のウエイトが最も大きい分野のため、点数を落とさないよう、徹底した対策が求められます。
税その他【3点】
出題範囲 | 出題科目 | 配点・設問 |
税・その他 | 税法鑑定評価基準・地価公示 | 3点 (問23から問25) |
税法では、地方税から1問、国税から1問、地価公示法・鑑定評価からどちらか1問の3問出題されます。
地方税は、不動産取得税、固定資産税。国税は取得税、登録免許税、印紙税、贈与税とテーマは決まっていますが、範囲が非常に広いです。
年度によっては難問が出題される可能性もあるため、深追いは避けて過去問をベースに勉強を行っていきましょう。
5問免除問題【5点】
出題範囲 | 出題科目 | 配点・設問 |
5問免除問題 | 住宅金融支援機構・景品表示法・統計土地・建物 | 5点 (問46から問50) |
その他の科目は比較的平易な内容で、統計以外の部分が5問免除対象の範囲となっています。土地建物の統計、着工戸数などは、覚えていれば正答できます。
免除を受けない人にも難易度は低めの分野です。時間をかけてじっくり準備する分野ではなく、試験が近づいてきた時に、模試等を通じて問題を解くことができれば良いでしょう。
5問免除対象者は、この分野の対策をしないで済むため、その分精神的にも楽になるでしょう。
5問免除の対象科目
5問免除は、宅建業に従事している人が「登録講習」の受講で「税その他」科目の回答を5問分免除=5問正解となる制度です。実務経験者のみの特例といえるでしょう。
前述のように難解な分野の設問ではないですが、5問が無条件に正解になる有利な制度です。
勤務先から従業員証明書を発行してもらえれば、正社員・パート・アルバイトの別を問わず利用可能です。受講費用もかかりますが、可能な場合は利用したい制度です。
5問免除の範囲
宅地建物取引業法施行規則 第8条第1号 「土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること」宅地建物取引業法施行規則 第8条第5号 「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること」 |
科目ごとの目標点の目安は?
宅建試験を受ける上で、何を目安に勉強すれば良いでしょうか。この項では、科目ごとの得点目標や勉強の取り組み方、優先順位の基本を解説します。ここでは、過去最高点の38点をベンチマークとした、合格点目標のプランを考えてみます。
権利関係【8点目標】
権利関係は14問中8問、約6割を目標とします。この分野は出題範囲が広いうえに難易度が高く、安定して得点するのが難しいためです。
他の科目とは違って暗記で対応ができず、法解釈への理解が必要な分野なので、深入りは禁物です。ここで時間を取りすぎて、ほかの分野の学習を犠牲にする人も多いです。
本番の試験でも問1から出題されるのは権利関係の問題ですが、時間配分上まず飛ばしておいて他の科目の問題を解き、最後に解くのがセオリーとなっています。
繰り返しになりますが、借地借家法、建物区分所有法、不動産登記法は暗記で対応できる分野のため、権利関係が苦手な方でもこの分野は抑えておくことで得点源にできます。
法令上の制限【6点目標】
法令上の制限は、8問中5点から7点の正解を目指します。暗記が得意な人にとっては、得点源の分野にもなりえます。
建物づくりに関する建築基準法と、街づくりに関する都市計画法がそれぞれ出題されますが、まず建物の接道義務や、「ここに何が建てられるか」という用途制限の2つをしっかり押さえます。
その他の法令では、農地法の暗記が比較的簡単に1点につながります。郊外や地方の不動産会社で働く人には、農地法は知っておくべき法令でもあります。
不動産や建築に関する専門用語への慣れと、「何のための数字か」という理解が、この科目で得点を増やすための秘訣です。
宅建業法【18点目標】
宅建業法は20点中18点、あるいは満点狙いでのぞむのが基本です。暗記がしやすい科目で、内容の専門性も高くないため、点が取りやすいと言われます。
宅建業法で満点が取れれば、他の分野の正答が5割でも、合格可能性ありとなるのですが、逆にここを苦手にすると、得点を積み上げるのがかなり苦しい状況となります。
不動産業従事者の中での決まり事の学習なので、一般的な興味は持ちづらい分野ではあります。コンプライアンス意識を高めるというつもりで、内容をしっかり覚えましょう。
税・その他【2点目標】
前述のように、税法に関する難度の高い問題が出題されるケース以外は、比較的得点源にしやすい分野です。
また、鑑定評価か地価公示のどちらかから1問出題されます。こちらも暗記で抑えるべきことを抑えて取り組み、税・その他の分野は3点中、2点を狙います。
5問免除問題【4点目標】
総務省統計局発表の「住宅・土地統計調査」から出題される着工戸数などの内容は、5年ごとに更新されるため、過去問や古い資料ではなく、最新の数字を把握して覚えるようにしておきましょう。
統計等は試験直前に確認しておくのがおすすめです。
宅建の試験には、ある科目が一定点数以下だと不合格になる「足切り」は存在しません。特定の科目が0点でも、合計で一定の得点に達すれば合格となります。
実務のためには、バランスよく知識をつけるのが理想ですが、試験の際は得意科目の点数を増やすなどの考え方も必要となるでしょう。
まとめ
宅建試験の科目ごとの点数配分と得点目標について、試験や科目の内容や、何の理解が重視されるかなども含めて解説しました。
合格のために宅建業法は満点を狙い、権利関係と法令上の制限は、易しい問題を確実に正解することで、基礎的な得点固めをすることが大切です。
不動産業界の未経験者も極力、学習内容への実務に近い接し方をしましょう。実際の売買契約書を入手したり、不動産関連のニュースに敏感になるなども、合格への近道となるでしょう。
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