不動産業界への転職を検討している方は、不動産業界の市場規模や将来性が気になるのではないでしょうか。この記事では、不動産業界の市場規模などを詳しく解説します。転職を検討している方はぜひご参考ください。
こんな⼈におすすめの記事
・不動産業界への転職を検討している
・不動産業界の現状や課題を知りたい
・結局のところ今後不動産業界で働くのはメリットがあるのかを知りたい
不動産業界の市場規模と種類とは
これから不動産業界への転職を検討する場合、知っておきたいこととして不動産業界の市場規模や不動産の種類などが挙げられます。
不動産市場規模の推移
業界における現状や動向、成長性を分析する指標として重要なもののひとつが市場規模です。
転職に限らず、業界研究時にはしっかりと分析しておくと良いでしょう。
総務省統計局「サービス産業動向調査2023年(令和5年)12月分(速報)」を基に年間の市場規模を算出すると、2023年の市場規模はおよそ54兆円※でした。
しかし、後ほど詳しく解説しますが、不動産指数は順調に上昇しており、不動産会社の数も増加しているのが現状です。また、不動産会社の増加に伴い雇用者の増加にも期待が持てるといえるでしょう。
この動向は転職を検討する際に適切な業界分析を行う上で重要な参考情報です。
しかしながら、コロナは特殊な状況下である点を考慮し、今後の動向に注目する必要があるでしょう。
※月間売上高 不動産業、物品賃貸業 4,569,933百万円 * 12
不動産業における業種の特徴
不動産業の業務内容は多岐にわたります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。
不動産仲介業
不動産業界において、不動産仲介業は最も典型的でイメージしやすい業種です。
宅地建物取引業の免許を持つ不動産会社がこの領域に属し、大小さまざま存在します。
不動産仲介業は、不動産の売買を仲介する売買仲介と、賃貸を仲介する賃貸仲介に分けられます。売買仲介では、都心部や規模が大きい不動産では大手企業が仲介に入るケースが多く、地方圏では地域に根ざした地場不動産会社が存在します。
賃貸仲介も、ブランドイメージが浸透している大手仲介会社やフランチャイズの店舗数が多い傾向にありますが、地場の不動産会社も地域の特性を生かすなど差別化を図っています。
戸建や土地など住宅を得意にする会社もあれば、事業用の物件を得意にする会社もあり、得意分野もそれぞれ異なります。
不動産買取業
不動産買取は、売買仲介と異なり不動産を直接買い取り、再販売することで利益を得ます。
購入時には一定の資金力が必要とされ、中規模以上の会社や大手仲介会社が一定規模の事業を行っています。
不動産買取業は、仲介よりも収益性が高い一方、在庫リスクに注意する必要があります。
買い取った不動産が転売できない場合、在庫を抱えることになり、場合によっては赤字で売却しなければいけないでしょう。
不動産買取業における在庫リスクを避けるために、買取業を行っていない不動産会社もあります。
個人ではうまく活用できない不動産を専門家である不動産会社が購入し、リノベーションや業態変更などにより有効活用を可能とする業種です。
不動産開発業
不動産開発業は、いわゆる街全体をつくる仕事といわれ、別名「デベロッパー」と呼ばれています。
用地の取得から企画、開発、販売、そして管理まで、エリア全体の開発に関わりますので、開発業だけでも多大なプロジェクトです。
商業施設や高層マンションの建築、大規模な戸建て分譲地の開発などが挙げられるでしょう。
また、必要に応じて行政の許認可を取得する必要があり、収入源は、建物の販売や施設利用のテナント料などです。
単に建物を建てるだけでなく、地域全体の発展に貢献する役割も担っています。
不動産開発業は大規模な取り組みとなりますので、大手の不動産会社や一定の事業規模がある不動産会社が開発事業を手掛けています。
不動産賃貸業
不動産会社は、賃貸や売買の仲介を行うだけではなく、自らも不動産を所有し賃貸することで収益を上げています。
いわゆる大家業と言われる分類で、主な収入源は家賃になり、売上の見込みも立ちやすいことが特徴です。
不動産賃貸業は、安定した収入を得ることができる一方で、空室に関するリスクなどに注意しなければいけません。
また、一般的には銀行から融資を受けて物件を購入するため、金利上昇などによる返済額の上昇リスクや、築年数が経過することによる全体的なリフォーム・修繕工事の備えが必要です。
不動産管理業
不動産管理業は、不動産の貸主から管理の委託を受けて行われる業務です。
この業務では、建物や物件の状態管理や入居者との契約管理、修繕やメンテナンスなどを担当します。不動産管理業に宅地建物取引業の免許は不要です。
空室を埋めるため賃貸仲介も行う場合があり、その場合は宅地建物取引業の取得が必要で、実際に多数参入しています。
街の小さな不動産会社も、アパートなどの管理業務を行っていることが一般的です。
不動産管理業は、貸主と入居者の間に立って円滑な物件管理を行うことで、安定的な収益を確保し、不動産の価値を維持・向上させる役割を果たしています。
得られる報酬は家賃の数パーセントと、売買などに比べると大きな収益にはなりませんが、毎月安定したストックの収益が得られる点に魅力がある業種といえるでしょう。
不動産業界の現状のトピックスについて
ここからは不動産業界の現状について詳しく解説します。
空き家の増加
人口減少の影響として、深刻な社会問題となる恐れがあるのが空き家問題です。
管理されていない空き家が増加してしまうと資産価値の減少や、治安の不安などを引き起こしています。
地域の自治体や空き家の所有者、近隣住民や不動産業者など多くの人にとって空き家の増加はマイナス要因です。
国は空き家問題への対策として、平成26年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を交付しました。
倒壊の恐れがあり、近隣に悪影響を及ぼす管理されていない空き家を特定空き家とみなし、行政が改善や罰則などに介入ができる法律です。
さらに令和5年12月13日に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。
管理不全空き家という新たなカテゴリーが設けられ、管理が不十分な空き家を管理不全空き家に認定することで、指導や勧告、固定資産税の住宅用地特例の解除が可能となりました。
管理不全空き家に認定することで倒壊までのリスクを負ってしまう特定空き家を減少させる対策です。
その他にも自治体が空き家バンクを運営し、空き家情報を提供する取り組みや空き家に関する補助金なども実施しています。
空き家の増加は、今後の不動産業界において、非常に重要な問題となるでしょう。
テレワークの普及
最近の不動産業界では、新型コロナウイルスの影響が大きく、テレワークの普及が急速に進んでいます。
このため、働き方や住まいのあり方が急速に変化しました。
テレワークをするためには、自宅での仕事スペースが必要となり、東京都内在住者でも広々とした間取りを求めて郊外に移り住む人々が増加しています。
2021年には、東京都で26年ぶりに人口が減少する事態が起きました。
郊外に移住した人々の中には、通勤の必要性がなくなったため、高額な東京の住宅価格に縛られる必要がなくなり、東京を離れる人々が増えた点が要因として挙げられます。
では、アフターコロナ以降のテレワークの割合はどのように変化したのでしょうか。
雇用型テレワーカーの割合を下記の表にまとめました。
年度 | テレワークの割合 |
2018年 | 16.6% |
2019年 | 14.8% |
2020年 | 23.0% |
2021年 | 27.0% |
2022年 | 26.1% |
2023年 | 24.8% |
引用:総務省【令和5年度テレワーク人口実態調査】
アフターコロナ後、若干の下落はあったものの、テレワークの普及割合に大きな変化はなく、新しいワークスタイルとしてテレワークが浸透しているといえるでしょう。
東京の高い住宅価格が人口減少の一因と考えられる中、東京の一極集中は今後も続くでしょうが、わずかながら変化の兆しが見え始めている点に注目です。
テナントの入居が減少した
コロナが終息の動きを見せていますが、多様なライフスタイルに対応するといった観点からテレワークを継続する企業も多くテナントの需要が減少しています。
2023年9月8日の日本経済新聞1面には、東京のオフィス空室率が10年ぶりに高水準との記事も掲載されており、アフターコロナ以降もテナントの入居に苦戦している状況です。
テナントビルの需要が減少することで賃料の減少だけではなく、近くにある飲食店や小売店などにも影響を与える現象です。
テナントビルに対する新しい価値の発見や、円滑な流通など不動産業者にとって大きな課題といえます。
不動産業界の課題と将来像とは?
ここからは不動産業界の課題や将来に向けた取り組みなどについて解説します。
人材不足への対応
不動産業界にかかわらず、近年は人材不足が深刻な問題として浮上しています。
人材不足の背景には、日本全体の少子高齢化と、業界全体でのIT化やDXの遅れが挙げられます。
近年は是正されてきましたが、不動産業界は長時間労働や休日出勤が多いというイメージから、選ばれにくい業界になっているともいえるでしょう。
各社が採用に困っている背景もあるので、働きやすく、長く続けやすい環境整備に動く企業も増えています。
不動産業界はより魅力的な職場環境を提供し、人材の確保と定着を図ることが期待できるでしょう。
不動産取引の減少
不動産業界において、市場規模は取引金額に大きな変化は見られませんが、取引数は減少しています。
一般社団法人日本不動産研究所が発表した2023年下期の不動産取引市場調査によると、2022年上期の3兆円のピーク時に比べて2023年下期は2.2兆円となっています。
人口減少に金利上昇懸念が追い打ちとなり、取引数の減少につながっています。
一方で、オフィスやホテルなどの大規模で高額な不動産の取引は増加傾向にあります。
国土交通省が公表した令和5年不動産価格指数によると、商業用不動産は前期比0.5%の上昇を見せており、オフィスや店舗に関しては高い指数を維持しているのが現状です。
将来的には、人口減少や空き家問題などの課題に対処し、居住用物件の取引を活性化させる必要があります。
また、新たな需要に応えるために、オフィスやホテルなどの取引を積極的に行うことが求められるでしょう。
不動産業界はこれらの課題に対処し、将来的な成長を見据えた戦略を打ち立てる必要があります。
新たなライフスタイルの模索
不動産業界の課題として、従来のサービスにとどまらず、新たなライフスタイルに対応する必要があります。
進化する社会において、業界も変革を求められています。
しかし、新しいサービスやアイデアを生み出すことは容易ではありません。
不動産業界だけで取り組むのではなく、他の企業や業界との連携も重要になるでしょう。柔軟性を持ち、市場のニーズに迅速かつ効果的に対応する能力が求められます。
老朽化した物件の活性化
老朽化した物件の活性化も、不動産業界にとって重要な課題です。
現在の空き家問題の解消にも寄与する、リノベーション需要を取り込む必要があります。
将来的には、不動産業界の仕事が変化し、新築よりもリノベーションの重要性が高まる可能性があります。老朽化した物件が増える中、リノベーション需要を予測し、それに応じた戦略を打ち立てることが業界の発展につながるでしょう。
日本は欧米と比べて中古住宅の流通割合が少ないですが、中古住宅の価値が今一度見直され、新築以外の選択肢も増えてくる可能性があります。
不動産業界で働く上でのプラス要素
不動産業界への課題について解説しましたが、今後の不動産業界においては将来性の高さを感じさせる事象も見受けられます。
ここからは、不動産業界において明るいきざしを見せているものについて詳しく解説します。
不動産業者の数は増えている
国土交通省が公表した、令和4年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果によると、2023年の不動産会社数は前年比0.8%増加しており、9年連続の増加です。
お互いが競争し合うケースも多くなりますので、競争によるサービスの質が向上する点も業界全体にとってはメリットでしょう。
年々増加傾向を見せていますので、地域に特化した不動産会社やひとつの分野に秀でている不動産会社など、多様なスタイルでサービスを提供する企業が増えてくることも考えられます。
不動産業界は比較的堅調な業種である
住まいに関するプロフェッショナルである不動産業は、人々の生活になくてはならない仕事で今後もなくなることはないでしょう。
バブル崩壊やリーマンショックなど大きな乱高下を繰り返すこともありますが、比較的堅調に推移しており、市場規模も一進一退の状況です。
不動産や住まいは、人がいる限りなくなることが考えられにくい点も挙げられます。
他の業界との親和性が高い
不動産会社に転職した場合、不動産を勉強することで、他の業界に役立つケースも多いです。
例えば、不動産の場合建物の知識が必要になりますので、建設業界との親和性が高く、融資などの関連性による金融業界なども密接に関係しています。
これら建設業界や金融業界などは、不動産を理解しておくとほかの業種でも対応しやすいといえます。
今後のキャリアアップにも幅広く活かせる知識が身につきます。
まとめ
不動産業界の市場規模などについて解説しました。
不動産業界は、さまざまな課題はあるものの市場規模も大きく、将来性にも期待が持てる業界です。
また、他の業界から不動産業界に転職し活躍している人も多いので、新卒だけではなく中途転職者も比較的飛び込みやすいといえるでしょう。
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